下田 祐輝さん(

熊本市健康福祉子ども局
障がい者福祉相談所

Yuki Shimoda

下田 祐輝さん(34)


東海大学付属第二高校(現・同大学付属熊本星翔高校)卒。1997年4月専門学校柳川リハビリテーション学院言語聴覚学科入学。2000年3月卒業。熊本県福祉総合相談所、熊本市子ども発達相談窓口、熊本市内の民間病院などを経て、2012年4月勤務先の現相談所に就職。主任技師。

小児の訓練には言語聴覚士の創造力が何より必要
くまもとSTこどもサポートNET運営メンバー―言語聴覚士(ST)を目指した動機は。
下田 兄が柔道で靱帯を切るなど度々けがをし、その都度理学療法士のお世話になっていましたので、最初は理学療法士のイメージでリハビリの仕事もいいなと思っていました。ところが、高3の時に、祖父が脳梗塞で倒れて失語症になり、その言語訓練の様子を見て初めて言語聴覚士の存在を知りました。それで理学療法士からSTに方向転換しました。
―小児の分野に興味を持ったきっかけは。
下田 実習先の熊本県福祉総合相談所で小児に関わらせていただき、大変楽しかったんです。実習指導者からも「子どもさん(のリハビリ)に合っているかもよ」と声を掛けていただき、自分でもすごくしっくりきたのがきっかけです。次に臨床実習に行った宮崎市内の病院で、小児から成人まで幅広く関わっておられる実習指導者に出会い、実習指導を受ける中で小児の言語訓練には、引きつけるアイデアやバリエーションが欠かせず、それにはSTの創造力が何より必要だと教えられ、小児の言語訓練に打ち込んでみようと思いました。
―そして、色々な職場で小児のリハビリを担って来られたわけですね。
下田 そうですね。臨床経験を積むために仕事を終えた後や休みの日を利用して様々な施設に出向きました。それは、今でも続けていて休日は全くと言っていいほどありません(笑)。その中で多くのSTや支援者の方々に出会え、たくさんの知識と技術、理念などを学ぶことができました。それがあって今の私があり、今の活動が生まれたと思います。障がいを持った多くの子どもや保護者に出会い、課題にもたくさん気づかされました。
―どういう課題ですか。
下田 それは言葉が出ない、耳が聞こえない、食事が食べられないというだけでなく、それを相談できる場所がなく、人もいないということです。近くにSTがいるのに情報がないために出会うことができず、やむなく40分の言語訓練を受けるために片道2時間かけ、車で熊本から福岡まで通っているといったことなどです。これはすごく大きな問題だと感じました。
下田 祐輝さん―そうした問題を少しでも減らすための「今の活動」ですか。
下田 そうですね。熊本には小児のリハビリをする施設が少ないのです。かつて勤めていた熊本市内の民間病院に小児のリハビリを開設したことがありますが、その経験を基に、小児のリハビリをする施設を増やす活動をしています。熊本県言語聴覚士会の理事をしているので、会の立場を活用させてもらっています。いわばSTの立場でできる地域づくりといいますか、支援の仕組みづくりですね。そのために大学の社会福祉学科の夜間部に2年間通って勉強しました。また、そこで得た知識を生かし、一緒に学んだ仲間と、子どもたちが、生まれた地域で成長できるようなシステムをつくっていこうという活動を他職種で取り組んでいます。
―公務員になったのもそのシステムづくりのためですか。
下田 目指しているのは、子どもの発達支援と保護者の子育て支援システムづくりです。医療、保健、福祉、教育、保育などの専門家が地域で連携し、発達支援を要する子どもとその保護者が必要な支援者にうまくつながる「流れづくり」です。活動を通して地域の変化も実感しましたが、しかし、民間だけ、有志だけの活動は、ひとたびその人たちがいなくなると活動自体も止まり、消滅してしまう、そうしないためには行政が動くことが重要だ、という話を仲間と交わしていたころ、熊本市が「子ども発達支援センター」を設立することになり、初めてSTを募集したのです。色々な人に相談したうえで応募して採用され、センター設立のメンバーになりました。
―下田さんの活動はSTとしてもパイオニア的ですね。
下田 先輩がたくさんいますから。先輩方から多くを学んだことの延長上であって、今の自分にできることを取り組んでいる感じです。支援を要する子どもたちに関わる課題に気づいただけでは何も変わりません。気づいたら動く、それで地域社会は徐々に変わります。1人の子どもを支えるだけでもSTとしては幸せなことですが、何の支えも受けていない子どもはどうなるだろうということです。そういう子どもたちを支援者とつなぐきっかけをつくれないかと気づいたのが、私の大きな転換点でした。それまではSTになったらリハビリに専念すればいいと思っていました。
―それでは済まない現実があったということですね。
下田 そうです。地域のシステムがうまく流れるようになり、出会うべき子どもたちが、出会うべき人のところにたどり着けるような流れになっていくと、私は安心してリハビリに打ち込めるだろうと思っています。その流れがある程度作れたら、いずれは臨床に戻りたいですね。
大学での講義や講演活動にも力を入れている―大学での講師、講演、シンポジストなども務めていらっしゃいますね。
下田 話すことが好きですから(笑)。講演は年間20回程度、大学での授業は、小児対象のリハビリを担当したいというSTを増やしたいとの思いで授業を2科目ほど受け持っています。
―自分をステップアップさせるために何をしますか。
下田 今は当面、行政の仕事についてしっかりと学ぶことですね。それと満足しないことです。自分の知らないこと、分からないこと、足りないことに気づきながら学び、臨床をしていきたいと思います。間違った時には「間違えていました。正しくはこうです」と言えるように、これは今も意識していることです。
―言語聴覚士を目指す後輩たちへのアドバイスがあれば、お聞かせください。
下田 あなたを待っている人がたくさんいます。障がい児(者)はSTとの関係性ができると、つまり、「この人は僕(私)のことを理解してくれている」と分かると笑顔になります。その笑顔でエネルギーをもらえますし、社会に貢献できているなぁという気持ちになれます。社会的にも魅力的な仕事だということを伝えたいですね。どの仕事でもそうだと思いますが、STも社会を担う一員だと実感できる仕事だということです。
次へ
福岡国際医療福祉学院
専門学校 柳川リハビリテーション学院